腕時計以前のスタンダード

懐中時計が生まれたのは、16世紀のドイツだと言われています。ただこの頃の懐中時計は工芸品としての要素が強く、時計としての精度はあまり高くありませんでした。その後17世紀に入ると精度が向上するものの、技師の数がごく限られていたために、懐中時計を持つことができるのはごく一部の王侯貴族に限られていました。一般庶民が持ち運べる時計を手にできるようになったのは19世紀に入ってから。鉄道網の発展に伴って正確な時計の需要が高まり、イギリスが巨大な経済力を武器に時計業界を席巻します。その後、戦争の時代に突入したことで瞬時に時間を把握できる腕時計が開発され、懐中時計は主流から外れていきます。それでも歴史に裏打ちされたロマンを感じられるアイテムということで、現在でも多くの愛好家が懐中時計を楽しんでいるのです。

伝統を自分の手のひらで

時計にはゼンマイの力で動く手巻き式と、電池で動くクォーツ式があります。当然ゼンマイを巻かなければならない分、手巻き式の方が手入れに手間がかかります。それでも、懐中時計を愛好する人達は、手巻き式を愛して止みません。それは何故か。手巻き式には歴史と伝統が詰まっているからです。手巻き式は毎日ゼンマイを巻いてあげる必要があるのですが、1日に1回、懐中時計を手に収めてゼンマイを巻く。その短い時間は、大切な時計を愛でることができる愛好家の大切なひとときであり、この上ない贅沢なのです。手巻き式は装飾性が高く目で見て楽しむことが出来る上に、しっかりとメンテナンスすれば何十年と使い続けることができます。愛用の時計を次の世代へ、というのも、浪漫性を高める要因と言えるでしょう。